べんべんリレーBLOG
第93回 法曹界を題材にした漫画~勝手に三選~
出版委員会第5部会委員 三宅由子
法廷を舞台にしたり、法曹三者や司法修習生を主人公に据えたりするなど、法曹界を扱った漫画は意外とたくさんありますが、その中には、「外国映画に出てきた日本の空港の待合室が畳!!」というのに似た感覚のニヤニヤが止まらない作品もあれば、他方で、法律家が監修に入られていたり、原作者・漫画家・編集者の方がすごく下調べされていたりするのか、細かいところまでリアルに作り込まれているなと思う作品もあります。
そんな数ある法曹界を題材にした漫画の中から、勝手に私のお気に入りの三選をご紹介します。
◆「イチケイのカラス」(講談社)
とある地裁に赴任してきた左陪席裁判官(特例判事補として単独事件も担当します。)を主人公に据えて、刑事裁判を扱った作品です。主人公を取り巻く登場人物がとても魅力的である上、紋切り型の刑事裁判・刑事弁護への批判や、クレプトマニアの被告人、裁判員裁判等のホットなテーマがリアルに描写されていて、全4巻と非常にコンパクトながら、内容は実に深いです。何らかの形で刑事裁判に携わったことのある方ならば、共感するものがあるはずです。面白いだけではなく、めちゃくちゃ考えさせられますので、「法律家を目指しています!」という方にも強くお薦めしたい作品です。なお、竹野内豊さん主演で来年ドラマ化されるそうです。
◆「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(新潮社)
傍聴マニアの北尾トロ氏が実際に東京地裁等で傍聴した裁判を題材にした原作のエッセイの空気感はそのままで、松橋犬輔氏が分かりやすく漫画化されているので、裁判をイメージしやすい作品です。「傍聴席からはこう見えるのか」という観点で読むと、自戒も込めて考えさせられる部分が少なからずあります。続編の「裁判長!ここは懲役4年でどうすか~ぼくに死刑といえるのか~」(徳間書店)や、「裁判長!ぼくの弟懲役4年でどうすか」(徳間書店)も必読です。
◆「ホカベン」(講談社)
弱者を助ける弁護士になりたいとの信念をもつ主人公が、様々な事件を通じて成長していくストーリーです。飽くまで個人的な感想ですが、漫画らしい漫画です。話のネタ自体は「あるある」テーマなのですが、展開は「ないな…い?」と突っ込みながらも、ストーリー展開が面白くてつい読んでしまう、そんな面白い作品です。熱血刑事ドラマに近い要素を感じます。
他にも、有名どころとしては、「家栽の人」(小学館)、「弁護士のくず」(小学館)、「島根の弁護士」(集英社)、「そこをなんとか」(白泉社)等が思いつきますし、連載が始まって日が浅いですが、司法修習生を主人公にした「リーガルエッグ」(講談社)も今後気になるところです。
秋の夜長(の仕事の合間)に、法曹界を題材にした漫画を読まれてみてはいかがでしょうか。「あるある」「ないない」と突っ込みながらも、よい気分転換になること請け合いです。