べんべんリレーBLOG
第104回 要通訳事件と外国語
出版委員会第2部会委員 行正千裕
最近,刑事当番で要通訳事件に当たることが増えました。今回は要通訳事件と外国語について私が感じたことを書かせて頂こうと思います。
私は,弁護士4年目に入った昨年を皮切りに,現在に至るまで約1年半の間にタイ語,中国語,ベトナム語,アラビア語と4つの言語の要通訳事件で国選弁護人に選任されました。3年前の被疑者国選制度の対象事件の拡大により,不法滞在などの懲役長期3年以下の出入国管理及び難民認定法違反も対象になった影響があるのかもしれません。
当事者や関係者との接見や連絡の際は通訳人の先生に通訳や翻訳をお願いできるので,弁護人が当事者の使用言語を使用できる必要はありません。とはいえ,タイ語の声調(抑揚のようなもの)は5個あって同じ音に5通りの意味をつけられる,アラビア語は昔の日本語のように右から左に文字を書くといったことを通訳人の先生や当事者に教えてもらったり,単純計算で接見時間の半分近く通訳人の先生と当事者が交わす外国語の会話を聞いていると,単純なもので,自分もこの言語を使えるようになりたい!という気持ちになぜかなりました。隙間の時間で教材を読み始めては当事者と使用言語が変わるという状況でしたので今のところどの言語もモノにできていませんが,外国語は面白いです。
また,当事者の使用言語の中には,通訳人が少なく,警察署と弁護人で通訳人を奪い合うような状況のものもあります。通訳人を確保できないときに役に立つ(こともある)のは世界共通語とも言われる英語です(と諸先輩方に教えて頂きました)。
しかし,英語の使用にも落とし穴がありました。それは「訛り」です。
法曹の方は司法修習などで全国から集まった修習生からそれぞれのいわゆるお国訛りを耳にされていると思うので,かつての私同様,多少の訛りがあっても意思疎通には問題ないと思われるかもしれません。
しかし,当事者の英語の中には,大阪弁のように語尾に「やん」「ねん」がついたりする形ではなく,「エ」が「ア」になるなど特定の音が別の特定の音に入れ替わる形になることがありました。こうなると私はもともと(英語が第二外国語にあたる当事者から「悪くはない」と言われてしまうほど)英語の素養が高くないので,最初に訛った単語を聞いたときには,知っている単語でもよく分からない言葉のように思ってしまいがちでした。
最後に,業務とは無関係ですが,最近は趣味と実益を兼ねてスロヴェニア語を勉強しています。私の母がスロヴェニアの方と長年文通をしており,現在は家族ぐるみのお付き合いに入れてもらっていることがきっかけです(写真は母がペンパルから頂いた1987年ザグレブ夏季ユニバーシアード競技大会マスコットキャラクターのザギーです。私が生まれる前から実家にいるので,だいぶ色合いが変わっています)。
外国語を習得することは自分の世界が広がることでもあると思うので,これからも(少しずつ)外国語を学んでいきたいと思います。