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第109回 結婚披露宴の乾杯酒は「シャンパン」ではなかった?
保険委員会損保・第三分野部会副部会長 笹野皓平
・友人・知人の結婚披露宴に参列したことのある方は,少なくないかと思います。その際,乾杯のお酒がどのようなものであったかを覚えている方は,どれほどいるでしょうか。正確には,「覚えている」かどうかというよりも,「認識している」かどうかといった方がよいかもしれません。
・一般に,結婚披露宴の乾杯酒として振る舞われるお酒の代表格は,「シャンパン」であると理解されていると思います。世界的にはもちろんのこと,日本でも「シャンパン」は華やかな場で供されるといったイメージが確立しています。「シャンパン」の日本向け出荷量は,ここ数年の間,量・金額ともに,世界で3番目に多いというデータもあります。
・ところが,実際に乾杯酒として提供されているものの中には,相当数の「シャンパンではないスパークリングワイン」が含まれているといわれています。皆さんが乾杯酒として飲まれたものの中にも,「シャンパン」ではなく,(あえて,単なる)「スパークリングワイン」が含まれているかもしれません。
・「そんなのどっちもいいよ」と感じられる方も多いでしょうが,両者の違いについては,フランスのシャンパーニュ委員会が厳格な立場を貫いています。すなわち,「シャンパン」あらため「シャンパーニュ」(Champagne)とは,ブドウの収穫から生産,醸造まで,全てをフランス・シャンパーニュの特定地域で行ったものに限る,といったように厳格に定義されています。「スパークリングワイン」は,一般に,3気圧以上のガス圧を持った発泡性ワインを総称したものといわれていますが,その中で「シャンパーニュ」という呼称を付するためには,生産の全工程を規律したルールを順守することが義務付けられているのです。順守すべきルールとして,例えば,使用できるブドウ品種はもとより,最低アルコール度数や,製造方法,出荷までの瓶内熟成期間(15か月間以上)などといった細目に至るまでが,具体的に決められています(ただし,本原稿執筆時点における情報を前提としています。)。
・とはいえ,必ずしも「シャンパーニュ以外のスパークリングワイン」が「シャンパーニュ」に劣っているというわけではありません。それらの中には,「シャンパーニュ」よりも厳格な基準を設けるなどして,その価値を高めようとするものもあります。
・以上のとおり,もしかしたら,皆さんが結婚披露宴で乾杯していたお酒は,「シャンパンではないスパークリングワイン」であったのかもしれません。もっとも,いずれにせよ,我々出席者をより幸せな気分に高めてくれることには,変わりありません。