べんべんリレーBLOG
第113回 フルートやってます
財務委員会委員 吉岡康博
2020年、コロナ禍が始まりステイホームと騒がれていた頃、YouTubeに出ていたお茶目な演奏家が奏でるフルートの音色に惹かれ、自宅で手軽に楽しめる趣味にとフルートを購入した。
実は、中学時代にフルートを演奏していたことがある。所属していたテニス部を引退した夏の終わり、吹奏楽部の友人に「人数が足りないから」と誘われて入部した。私はトランペットを吹きたかったが、顧問の先生に「短期間でトランペットは絶対に無理。これならお前でもできる」と言われて与えられたのがフルートだった。
当時、吹奏楽部に男子は4人しかおらず、当然フルートパートは私以外全員女子。毎日放課後、女子に囲まれてモジモジしながら練習していたことや、パートリーダーの女子にほのかな恋心を抱いたことなどが懐かしく思い出される。コンクールや体育祭、文化祭で吹奏楽部の一員として演奏したことはそれなりに楽しく、わずか3か月間だったが、嫌々参加していたテニス部の3年間より充実していたと思う。すっかりオジサンになってしまった今、甘酸っぱい中学時代を振り返りながらフルートを奏でるのは、愉快で甘美なことである。
フルートの明るく澄んだ音色は、心を和ませる作用があるようだ。天気のよい日に自宅近くの遊歩道でフルートを吹くと、通行人が時々立ち止まって聞き入ったり、拍手をくれる。本当にヘタクソな演奏なのだが、それでも「癒されます」などと言われると有頂天になる。私のような者でも偉大なるフルートの力を借りれば、人の心を癒すことができるようである。一度、買い物帰りの主婦から「チップを渡したい」と言われて断ったところ、「これ、奥さんに渡してや」と、スーパーで買ってきた食材を差し出されたことがある。
私が普段演奏する曲は、エチュードやクラシック曲が多い。技術を上達させるためである。しかし、クラシック系はあまり一般受けしないので、人気ポップスも演奏するようにしている。最近は、「マリーゴールド」や「空と青」を練習したが、世代ではないせいか、あまりしっくり来ない。そこで、楽器店で「フルートで奏でる昭和歌謡ポップス」という楽譜を買い、私の世代の曲である「赤いスイートピー」「微笑がえし」「想い出がいっぱい」などを吹いてみたところ、これが楽しくて仕方がない。ほとんどの曲を初見で演奏できるのも、昭和歌謡のメロディーが私の心に染みついているからなのだろう。
フルートは持ち運びが容易な楽器なので、私は旅先にフルートを持って行き、風光明媚な場所で吹くようにしている。日常の慌ただしい生活から逃れるために旅をするのであるが、旅先でフルートを演奏すると、更に違った世界が見え、精神的にもより豊かになれるような気がする。非常に贅沢なアイテムである。
コロナ禍が沈静化して、また元のように自由に海外旅行できるようになれば、世界の名所でフルートを吹いてみたいと思う。