べんべんリレーBLOG
第114回 英語力
交流委員会副委員長 森下知紀
高校卒業後、父親の海外赴任に便乗してアメリカのシカゴ郊外に1年間住んでいた。
大学受験は終えたが、英会話の能力は皆無であり、しょーもないことで困ったりした。
① 瞬間接着剤問題
理由は忘れたが、瞬間接着剤を買おう!ということになり、ホームセンターへ行った。
ホームセンターはIKEAみたいに広かった。店員さんに声をかけたが、瞬間接着剤の英語がわからない。「Do you have アロ●アル●ァ?」と言ってみたが通じない。「Aという物体をBという物体とくっつける」とか身振り手振りを交えて15分ほど説明したら、「Oh!」と店員さんの顔が輝く。颯爽と歩く彼女の後ろについていくと、案内された先にはナイフとハサミが陳列されていた(正反対)。
1時間程度を要して、ようやく瞬間接着剤を入手した。英語では「glue」(のり、ですね)というそうだ。
② 宿題問題
地域の大学に入学したが、正直なところ授業の90%はわからない。
なにかの宿題が出たような雰囲気だが、どこが宿題で何をすればいいのかわからない。
まじめな(当時は)私は、授業で読んだ(と思われる)箇所とその周辺を片っ端から解いた。もちろん全部英語なので、とてつもない時間がかかった。人生で一番勉強した気がする。
その結果、「Logic」という講座の教授がえらく高い評価をくれて、何を勘違いしたのかA+の学生しか参加できない地域ボランティアの特別講義に参加しないか、と申し出てくれた。
もちろん丁重にお断りした。会話のできないボランティアなど邪魔なだけだろう。
③ アジア人問題
「Anthropology」(人類学)という講義で、「アジア人」の回があった。先生がアジア人の特徴を説明しているが、やはり90%わからない。唯一わかったのは、「short‐legged」(脚が短い)というフレーズのみだった。
講義の終盤、先生が、この中にアジア人はいるか?と質問したので、何人かおるやろ、と軽い気持ちで手を挙げたら、私だけだった。先生が立ってくれというので、その場で起立したところ、100人からいたクラスの全員が、「ああ、なるほどね~、確かにね~」みたいな顔をした。非常に失礼な話しである。
④ パンク問題
車を運転して大学に向かっていたところ、パトカーが近づいてきた。日常的にたくさんのパトカーが巡回しており(交番がないから、らしい)、交通違反に厳しく、日本のように何㎞オーバーまでは大丈夫というようなことはない。
ポケットに手を入れると撃たれる、手はハンドルの10時10分の位置、と言われていた。心当たりはないが、恐怖に手をふるわせて運転席の窓を開けたところ、サングラスのかっちょいい警察官から、「Your right front tire is flat.」(右前のタイヤパンクしてるよ)と言われた。
うわずった声で「Really?」(ホンマに?)と返したところ、「Yes. Really flat.」(うん、すんごいぺったんこ)と言われた。
パンクの程度を聞き返したわけではなかった。これに限らず、微妙に食い違うニュアンスがとても難しかった。
⑤ Davidくん問題
Davidくんというクラスメイトと仲良くなった。友達のいなさそうな私に手を差し伸べてくれたのだろう。
クラスメイトと一緒にレポートを作成するという宿題が出て、Davidくんの家に行った。 一緒に宿題をしていたところ、突然、別の部屋でお父さんが怒りはじめた。が、何を言っているのか全く分からない(から、怒っているかどうかも本当はわからない)。怖くなった私は、ひたすら「I’ve gotta go.」(帰らなあかん)と繰り返して、家に帰った。
そのあと、宿題はどうしたんだろう。優しいDavidくんに申し訳ないことをした。ちなみに、Davidくんは2mを超える高身長で、一度一緒にバスケをしたが、何の相手にもならなかった。
1年で、なんとか困らない程度に会話できるようにはなったが、とても流ちょうとは言えない。アメリカに住んでいたというと、英語しゃべれますよね?と聞かれるが、これはしゃべれると言っていいのか悪いのか。ちなみに、私の英語は関西訛りらしい。
でも、英語よりなにより、異文化との交流は、非常に刺激的で貴重な経験だった。
コロナ禍による制限も緩やかになりつつあり、いつか、また行ってみたい。