べんべんリレーBLOG
第168回 電卓と電話機の数字
特約店委員会副委員長 石原明洋
弁護士になりたての頃、事務員さんが損害額の検算をする姿を、横目で眺めていました。手元をまったく見ないまま、ものすごい速さで電卓を叩いていく。「これはかっこいい」と思い、それ以来、私も電卓をブラインドタッチで入力できるよう、ちょっぴり高めの電卓を買い、コツコツ練習を続けてきました。
5年ほどかけて、ようやくそれなりの速さで打てるようになった頃のことです。電話番号をかけ間違えることがありました。間違えた番号を確認してみると、「8」を押したつもりが「2」を押している。つまり、電話機を使っているのに、指が電卓と同じ動きをしていたことに気づきました。
気になって調べてみると、電卓と電話機では、数字の配列が上下逆になっていることに気づきました。
(電卓)
7 8 9
4 5 6
1 2 3
0
(電話機)
1 2 3
4 5 6
7 8 9
0
電卓の配列は、1910年代に登場した機械式加算機の10キー配列がもとになり、現在の電卓にも受け継がれているようです。もっとも、なぜ「7・8・9」を上段に配置したのかについては、はっきりとした理由は分かっていないようです。
一方の電話機は、ダイヤル式からプッシュボタン式へ移り変わる際に、ベル研究所がさまざまなキー配列について、入力の速さや正確さ、使う人の好みなどを実験的に比較しました。その検討を経て、「1・2・3」を上段に置く現在の配列が採用されたそうです。
こうして、別の経緯から生まれた二つの配列が残り、いずれも現在では国際規格に定められています。
ちなみに、パソコンのテンキーやレジなどは電卓型の配列、ATMやクレジットカードの暗証番号入力などは電話型の配列が用いられているようです。
ただ、弁護士の仕事では、電卓も電話も毎日のように使います。正確さが求められる二つの道具で、数字の並びが逆さまになっている。これはもう、トラップにしか思えません。
しかも私の場合、電卓のほうを先に指へ覚え込ませてしまいました。意識しないと、電話でも指が勝手に電卓の配列を探しにいきます。おかげで今でも、電話番号を押すたびに、指が間違った方向へ動いていないかと、ほんの少し身構えています。
できれば、どちらかに統一してほしいところですが、長年かけて指に覚え込ませた電卓の配列を、今さら忘れるわけにもいきません。
そんな小さなもやもやを抱えながら、今日も私は、電話をかける前に数字の配列をそっと確認しています。








