べんべんリレーBLOG
第32回 ペット=物?
出版委員会第3部会委員 竹田大介
何を隠そう私は、大の猫&犬好きです。現在ノルウェージャンフォレストキャットの龍馬(8才)とミックス犬(狆×チワワ:通称狆チワ)の小五郎(3才)と楽しく暮らしています。
近年になって、ペットも家族の一員のように扱われ、私達の生活にとても身近な存在となってきています。私にとっても2匹は子供同然のような存在です。ペットを飼っていない人には驚かれるかもしれませんが、2匹とも医療保険に入っていますし、小五郎にいたっては犬の保育園に通っていました(引っ越しに伴い惜しまれつつ退園(>o<))。保育園の出費は、月に4万円以上掛かっていたことから、妻と冗談めかして「行政から児童手当出たらいいのにね~」などと話していました。
以上のように、社会内でペットは家族同然というのが現状であり、ペット産業が大きく成長していることも肯けます。
さて、法律の世界ではどうでしょうか?
残念ながらペットが家族の一員という実態にはまだ追いついていないように思います。ペットは民法上「動産」と考えられています。従って、ペットが第三者の不法行為によって死亡した場合であっても、「物」としての時価賠償が原則であるとの議論となってしまいます。私は法律家ではありますが、一人のペット愛好家でもあります。そんなペット愛好家の私の心の声が、
「え??動産?物扱い?家族と一緒なのに!!!」
と叫んでいます。
近時私のようなペット愛好家にとっては注目すべき裁判例が出ていますので、紹介いたします。
名古屋高裁平成20年9月30日判決交民集41巻5号1186頁です。交通事故により同乗していた犬も受傷し、後肢麻痺の傷害を負った事案です。名古屋高裁は、「ペットは、その法的評価とすれば、厳然たる物であり、物として損害算定をすべき」とする控訴人側の主張に対して、「近時、犬などの愛玩動物は、飼い主との間の交流を通じて、家族の一員であるかのように、飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくないし、このような事態は、広く世上に知られているところである(公知の事実)。・・・飼い主の精神的苦痛は、主観的な感情にとどまらず、・・・財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛がある」として、被控訴人ら1人あたり20万円の慰謝料を認めました。
上記裁判例が、「ペットが飼い主にとってかけがえのない存在になっていること」を「公知の事実」と判断しているところは、注目すべき点だと思います。しかし、慰謝料の額としては低すぎる気もします(高いと思う方も当然いると思いますが・・)。かけがえのない存在が大怪我(ないし死亡)した場合の慰謝料として果たして妥当な額なのでしょうか?ペットの場合は、10万円程度の金額で同種類の個体を購入することができるという点も考慮されているのかもしれません(ちなみに名古屋高裁の事例は購入代金6万5000円です)。
いずれにしても、ペット愛好家として今後の裁判例に注目して行きたいと思います。