べんべんリレーBLOG
第35回 備えあれば憂いなし
保険委員会第三分野部会副部会長 福井拓
弁護士の取扱い業務として、交通事故の紛争処理は一般的なものであり、多くの方が取り扱ったことのある分野かと思います。そして、自動車の関与する交通事故の場合には、広く自動車保険が普及しているため、どこからもお金を支払ってもらえないというケースはそれほど多くないのではないでしょうか。一方で、ここ最近の傾向として感じるのは、自転車同士、あるいは自転車と歩行者との事故など、自転車運転者が加害者となる事案が増えているということです。自転車には自賠責保険もありませんが、自転車運転者に高額の賠償を命じた判決がニュースとなっていることからしても、いまだに多くの方にとって、このような事故への備えは十分ではないのかもしれません。
さて、偶然の事故というものはいつ誰に降りかかるか分からないものですから、弁護士自身が当事者になることもあり得ます。ご自身で自転車を運転される方は当然のこととして、小さいお子さんがおられる方などにとっては、万が一にも加害責任を負ってしまう場合に備えて、個人賠償責任保険への加入は必須と言えるでしょう。一方で、自分が事故の被害者になった場合には、加害者に資力がないなどの理由により、医療費等の賠償が受けられないこともあります。第三分野部会では、いわゆる第三分野の保険として医療保険等を取り扱っておりますが、突然の怪我や病気に備えて自分の身を守るという意味では、このような保険への加入も検討の対象となるのではないかと思います。
また、弁護士業務として交通事故を取り扱う際には、自動車保険等に付帯された弁護士費用特約の普及により、保険会社から弁護士報酬が支払われるケースも増えていますが、自動車の関与しない事故は支払の対象とならない場合もありますし、そもそも事故ではない離婚や遺産相続などの事案については、これまで弁護士報酬をカバーする保険はありませんでした。しかし、最近になって、これまでよりも補償範囲の広い弁護士費用保険も販売されたとのことであり、いまだ販売開始から間がないため具体的な利用例は分かっていませんが、今後の弁護士業務に影響を及ぼす可能性もあります。
このように、第三分野部会では、厳密な意味での第三分野保険に限ることなく、広く弁護士の生活・業務に役立つ新たな保険の研究・導入を担当しています。また、公的年金制度や協同組合で取り扱っている各種保険等の情報を提供することにより、弁護士としての将来設計に役立てていただくため、「弁護士ライフプランガイド」を発行するとともに(近日中に改訂版を発行・配布する予定ですので、ご覧いただければと思います。)、個別にご相談いただく機会として、社会保険労務士等による「弁護士ライフプラン相談室」を月1回無料で開催しています。保険への加入・見直し等を考えているものの、具体的なプランが決まっていない方などは、ご利用を検討いただければと思います。