べんべんリレーBLOG
第36回 弁護士業務と紙について
研修委員会委員長 片山裕介
メールやインターネットの発達により、世間ではペーパーレス化が進んでいます。
私は、以前、当事者からの提出書面や提出証拠が非常に多い案件について、訴訟の記録を全てPDFファイル化してノートパソコンに入れて、完全なペーパーレス化が可能かどうかを試したことがありました。PDFファイル化をすれば、事件記録の軽量化はもちろん、検索機能を使って探したい番号の証拠を直ぐに検索することができます。一方で、PDFファイルから、“証拠番号が直ぐに出てこない証拠”を急いで探す場合などは、ページを繰るためのクリック速度が速すぎてパソコンがフリーズしてしまうこともありましたし、証拠を見比べて書面を作成する場合などは、パソコンの画面よりも、簡単にページを行ったり来たりできる紙のほうが作業がしやすかったということがありました。
結局のところ、私は、その事件について、完全なペーパーレス化は断念して、PDFファイルと紙の記録の両方を使うことになり、弁護士業務と紙とは、切っても切れない関係にあると思うようになりました。
弁護士業務と紙との関係といえば、事件が終了すると、紙の事件記録が残ります。民法171条では、「弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、…3年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。」と定められています。そのため、事件終了から少なくとも3年間は、紙の事件記録を保管しておかなくてはなりません。
私は、事務所を開設して1年と少しですので、まだ、事務所の記録棚が事件記録でいっぱいになってしまうような状況ではありませんが、近いうちに、事件記録の置き場所に困ると思います。
先輩方に対して、終了した事件記録の保管方法について尋ねると、「事務所近くのレンタルスペースに保管している」「倉庫を借りて保管している」「事件終了後3年を経過すると業者に廃棄してもらっている」など、いろいろな意見を聞くことができました。事務所を開設してからの事件記録をずっと保管しているという先輩は、昔の依頼者から事件記録を見せて欲しいと言われることはほとんど無いけれども、当時考えついた法律構成や引用した裁判例を参照するために、終了した事件記録を出してくることがある、とおっしゃっていました。
事務所の記録棚が事件記録で埋まってきた今日この頃、今後の事件記録の保管方法や終了した事件記録の使い方について考えるところがあり、記事にしてみました。