べんべんリレーBLOG
第54回 裏しまなみ海道
不動産管理委員会委員長 広瀬元太郎
私は、愛媛県の瀬戸内海側の町の出身です。高校を卒業するまでの18年間をこの地方で過ごし、多くの友人と同様に、大学入学のときに町を離れました。それ以降、場所は転々としながらも大都市圏に居住を続け、愛媛県には住んでいません。
さて、四国と本州を結ぶ橋が三本あることはご存知の通りです。大阪に近い方から、明石海峡大橋、岡山と香川の間の橋、広島県の尾道市と愛媛県今治市を結ぶルートです。大阪から離れるほど、マイナーな存在になっていきますが、尾道と今治を結ぶルートは、「しまなみ海道」と呼ばれて、観光地としての地位を確立しつつあり、また、徒歩や自転車で渡れる唯一の本四架橋として、サイクリングの聖地となっています。
この辺までなら、みなさんもご存じの範囲ですが、しまなみ海道のさらに西、広島県呉市から、東に向かって6、7個の島が連続しているところがあります。本州から順番に、下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島、平羅島、中ノ島、岡村島。聞いたことがないですよね。私も知りませんでした。これらの島には、すべて橋が架かっています。最初の本州と下蒲刈島の間の橋は700円余の有料橋ですが、二つ目からは全部無料です。
これらの島は、漁業やミカンやレモンなどの柑橘系果実が主要産業である素朴な島です。これといった有名な観光地はありません。ミカンを植えた山があり、山の向こうには小さな漁港があり、橋を渡って次の島に行くと、また同じようにミカン山と漁港や砂浜が繰り返されます。橋のたもとにある駐車場に車を停めて海を見ると、隣の島との間の狭い瀬戸(海峡のこと)を、橋のかかっていない島へと向かう小さな連絡船が進んでいきます。時間が停まっているような感じです。写真は、岡村島と隣の島の間の瀬戸です。泳いで行けるくらいの距離です。
最後の橋を渡ると、岡村島です。ここから先は愛媛県です。あと3つの瀬戸を渡ると、大三島という島に到達します。この島はしまなみ海道が通っているので、それを使って、四国本土や本州に行けるのですが、残念ながら、橋がかかっているのはこの岡村島までです。岡村島は、愛媛県でありながら、陸路で行けるのは広島県だけという、変わった位置づけです。
岡村島の港からは、フェリーが今治と大三島に向けて出ています。フェリーターミナルというには、あまりにも小さな場所から、フェリーに乗り込みます。この辺の人にとっては、フェリーといってもバスみたいなものです。手早く、車や自転車を乗せて、あっという間に出航です。
船が港を離れるにつれ、桟橋がどんどん小さくなっていきます。島のおばあさんたちが、いつまでも船に向かって手を振ります。夕方の傾いた太陽を受けて、海面がキラキラと光り、フェリーの航跡が島に伸びています。
40年くらい前の歌謡曲である「瀬戸の花嫁」をほうふつさせる昭和的な光景は久しぶりです。この海を離れて30年、なんか都会で忙しく仕事をしているけど、自分はこの地方の人間なのだなあと心から思う瞬間です。
高速道路であるしまなみ海道とは一味違うこのルート、「とびしま海道」とも「裏しまなみ海道」とも呼ばれています。大阪から車でもいけますし、新幹線→在来線→バス→フェリーの乗継も楽しいです。次の休みに行ってみましょう。